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安田享平のランニングライフ

期分け・42

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前回同様、マラソンの走り方についてですが、今回も「後半ペースダウン型(スローダウン)」について考えていきます。前回は、同じ後半ペースダウン型でも中間点をさかいに大きく失速する「前半突っ込み型(後半失速)」について記載しました。

実は、実業団選手(プロ)をもってしてもこの走法になってしまうランナーは実に多く、決しておすすめできる走法ではありません。もちろん、様々な走法もありますが、やはり30k前後までは目標タイムを狙ったラップタイムを刻めないと次回以降のマラソンにもつながりません。特に、これから初マラソンやマラソン経験が極端に少ない市民ランナーの場合、マラソンの目標タイムを自ら予測し、自ら設定することは相当難しいと言えます。

では、マラソンの目標タイムはどのように決めればよいのでしょうか?

そのヒントは、「持久係数」にあります。このブログでも何度か取り上げていますが、10kやハーフマラソンの記録を基準にその何倍でマラソンを走れるかの係数です。個人的には10kの記録を基準にした持久係数の方が、マラソンの回数を重ねていくほどより精度が増してくると感じます。したがって、今回も10kのタイムを基準に話しをすすめます。

はじめに、ある程度マラソン経験を積んで、トレーニングも確立しているランナーのケースです。この場合、10kの記録に対し、持久係数は概ね4.5倍から4.8倍程度の範囲にマラソンの記録も到達していきます。

具体例として、10kを40分で走れる市民ランナーのケースを計算してみます。◆計算1).持久係数4.5の場合=40分×4.5=3時間00分00秒。◆計算2).持久係数4.8の場合=40分×4.8=3時間12分00秒。

この市民ランナーの場合、3時間00分から3時間12分の間がマラソンの目標タイムとなります。余談になりますが、サブスリーを目指すには、10kのタイムは最低でも40分を突破しておくことが重要な要素であるとも言えそうですね。

次に、初マラソンも含め、マラソン経験の少ない市民ランナーの場合です。これについても10kの記録を基準に計算していきますが、持久係数は若干変わります。もちろん個人差もありますが、持久係数は4.9から5.0程度に修正して考えます。その主な理由として、初めてでも30k前後までは確実に目標タイムを狙ったラップタイムを刻んでいけるようにするためです。

では、上記した例と同じく10kを40分で走れる市民ランナーを例に計算してみます。◆計算3).持久係数4.9の場合=40分×4.9=3時間16分00秒。◆計算4).持久係数5.0の場合=40分×5.0=3時間20分00秒。

このように同じ40分で走れる市民ランナーでも初マラソンやそれに準ずる場合、持久係数を少し大きくして目標タイムも下方修正した方が賢明です。もちろん、中間点前で失速するような「前半突っ込み型(後半失速)」を回避する狙いもありますが、場当たり的で雑なレース展開になり難いので、次回以降のマラソンに向け、課題や対策もより具体的に振りかえることが可能となります。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・8

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GW後半の5月3日から5月5日の日程で、盲人マラソン強化合宿を実施しました。場所は千葉県富津市富津公園です。この富津公園で強化合宿を実施するようになって早7年目となりました。この富津公園は既にご存知のとおり、箱根駅伝を目指す大学やオリンピックを目指している実業団チームも多数拠点にしています。そんな富津で我々も強化合宿できることをとても誇りに感じております。

あらためて、富津の方々をはじめ関係各位のご理解ご協力に対し、心より感謝申し上げます。

さて、富津で強化合宿を重ねてきた成果として、昨年のIPC世界陸上競技選手権大会では、全盲と弱視のマラソンでそれぞれ銅メダルを獲得することができました。特に、2004年のアテネパラリンピック以降、世界のレベルから取り残されてきた感のあった全盲クラスの選手たちが、再び勢いを取り戻してきました。

具体的には、マラソンを目指す上で重要な指標となるトラック種目での躍進がめざましく、1500mでは4分20秒から4分30秒、5000mでも16分の壁に肉薄してきました。もちろん、これらの記録はロンドンパラリンピックA標準記録を突破していますが、現時点で日本代表選手に選出されるか否かは、わかりません。しかし、世界レベルに到達してきたことは間違いありません。

同様に、上記のような全盲選手をサポートする伴走者の走力も相当なレベルになります。そのため、伴走者に対しても現時点の走力を重視することになり、人選に苦慮することが多くなってきました。更に、伴走者も選手同様、国際ルールや国際登録、ドーピング関係についてもより厳格になってきており、誰にでもお願いすることが難しくなってきているのも事実です。

今後は、ロンドンパラリンピックはもちろん、国際大会に通用する伴走者の育成や発掘等も重要な強化対策のひとつになっていきます。引き続き、この富津を拠点に地道な取り組みを継続していきますので、皆様方の絶大なるご理解ご支援をよろしくお願いします。

最後に、あらためて伴走ルールの重要な3点を記載しておきます。至極当然のことですが、伴走者がルール違反すると、共に走っている視覚障害者選手が即失格になります。

◆1).視覚障害者選手との距離は常に50センチ以内とする。但し、競技中のフィニッシュライン前10メートルにおいては、この距離をのばしてもよい。※この間は伴走ロープを離してもよい。◆2).いかなる場合も視覚障害者選手を引っ張ったり、押して前進させたりして推進を助けてはならない。※人以外の自転車やバイク、動物等と走ることは違反となる。◆3).視覚障害者選手がフィニッシュラインをこすとき、伴走者は視覚障害者選手の後方にいなくてはならない。※伴走者の方が胸ひとつでも先にゴールすると視覚障害者選手が失格となる。

つづく。

横浜駅伝大会

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先日の4月30日に横浜駅伝大会が開催されました。この駅伝大会は今回で24回目と、ランニングブーム以前から開催されている市民駅伝大会です。しかも区間数や距離は高校駅伝と同じ7区間42.195kと本格的です。したがって、ランニング経験の浅いランナーたちが、軽い気持ちで出場するには少しハードルが高い駅伝大会と感じます。

ところが、ここ数年のランニングブームは全国各地で開催されている各種駅伝大会にも波及し、この大会も今年は650チーム以上のエントリー数となりました。

大会は鶴見川にある河川敷のランニングコースで開催されます。具体的にはスタート及びゴール地点と各区間の中継点は全て同じ地点にし、その中継点をさかいに上流と下流に設置してあるそれぞれの折り返し地点を往復するコースです。そのため、応援する側にとっては、常に同じ場所で全区間を応援できるため、とても盛り上がります。

そして、私がコーチするチームも男女混合の部(奇数区間が男子、偶数区間が女子)に3チーム出場しました。結果は、3チームとも6位入賞をはたし、AC・KITAチームは7連覇を達成することができました。

もちろん公式な大会ではないので、特に何がある訳でもありません。しかし、同じ大会で連続して勝ち続けることは、選手(市民ランナー)やチームにとっても大きな自信につながります。特にこの駅伝大会は区間数が多く、区間毎の距離も長いので、チーム全員がそれぞれの区間をキッチリと走ることが必要不可欠となります。また、メンバーに起用した選手は7区間中4名が初出場と、来年以降につながる内容でした。

さて、この駅伝大会を毎年応援していると、様々なことを感じます。特に、チーム数が増加し、トップ争いのチームと楽しみながら走る下位チームとの差が年々大きくなってきている点です。その結果、同じコースを繰り返し走るため、コース上に区間違いのランナーが多数混在し、上位チームは常に下位チームを追い抜く展開となります。

そして、この展開こそがこの駅伝大会を攻略していく上で最も難しい点のひとつと感じます。それは、後ろからゴボウ抜きをしている展開なら誰でもスピードに乗っていけるように見えます。ところが、この駅伝大会ではゴボウ抜きに近い状況となる後半の区間に配置している選手ほど、設定タイムどおりに走れません。少なくとも7連覇の経験からそう感じます。

もちろん、いくつかの要因はありますが、大きな要因のひとつとしてゴボウ抜きをしているチームが、自チームより前を走るチームではなく、下位を走るチームである点です。その結果、本来のスピード感覚より遅い方に感覚がずれ、ゴボウ抜きをしているにも関わらずスピードは上がらない負の連鎖にはまるのです。

実は、正月の箱根駅伝やニューイヤー駅伝でも似たような展開があります。例として、1区からトップでタスキを受けた選手が2チームに抜かれて3位で次の3区につないだとします。一方、下位の方でタスキを受け、10チームを抜いて7位まで引き上げた選手がいたとします。

この2選手の区間順位を比較したとき、2チームに抜かれて3位に後退したにも関わらず区間順位も3位。ところが、10チームを抜いて7位に躍進したが区間順位は6位と、見た目の走りと実際の区間順位が違うケースは意外と多く、区間順位はタスキを受け取った順位に影響を受け易いのです。それだけに、後方からタスキを受け取って、区間上位に食い込むことは相当な走力と共に、自分自身を追い込める強い精神力も要求されるのです。

以上のように、横浜駅伝の後半区間の選手は、常に後方からタスキを受け取るような展開になり、自分自身の力を出し切ることが難しいと感じます。しかし、逆にそのことが選手のメンタル面を強化することにもつながり、目標のマラソンにも生きてくると…。

GWを走る

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今年もいよいよGWになりますが、旅行をはじめ様々な計画を立てていることと思います。また、ランニング愛好家の皆様にとっては、恒例のランニング三昧になる連休と思いますが、いかがでしょうか。そこで今回は、この連休を活用したトレーニングについて考えてみます。

はじめに、今月のマラソンまでしっかりと走り、連戦が続いてきたランナーについてです。

特に、マラソンを何本も走り疲労の自覚症状がある場合や既に故障や怪我をしているランナーです。もちろん、もっと以前から故障のためトレーニングを中断しているランナーも対象となります。

至極当然のことですが、痛みや疾患等がある場合は完全休養となり、絶対に無理をしてはいけません。しかし、そうでない場合、このGW期間は期分けで言うところの「移行期(回復期)」となります。すなわち、軽めのジョギングや水泳、あるいは長めのウォーキング等を軸に回復を優先したトレーニングが有効的になります。

次に、マラソンの疲労もある程度抜けて気持ちもリフレッシュできているランナーです。

このようなランナーはGWを活用したスピードトレーニングをおすすめします。また、せっかくの連休です。いつも一緒に切磋琢磨している仲間たちとのミニ合宿は更にトレーニング効果を高めます。もちろん、宿泊が難しいのならいつもトレーニング会場にしている近くの競技場や河川敷等を活用し、午前と午後の2回実施する2部トレーニングがおすすめです。

また、この時期は初夏を思わせるような気温に上がる日もありますが、身体は暑さに順化していません。したがって、秋から冬のように長い距離を走り込むより、距離を短くしてスピードを上げるインターバルのようなスピードトレーニングの方が逆に安全で効果的ともいえます。

では、実施するにあたり具体的なポイントをあげてみます。

◆ポイント1).インターバルのトータル距離を3000m~5000m程度におさめる。例として、200m×15本~20本、400m×8本~12本、1000m×3本~5本程度の本数が効果的。◆ポイント2).リカバリー(休息)は距離でなく時間で管理し、疾走時間と同じ時間(1対1)で実施する。◆ポイント3).トレーニング強度の調整は、疾走時間ではなくリカバリー時間で調整する。つまり、強度が楽に感じるならリカバリー時間を短くし、苦しく感じるなら長くする。

そして、全てのトレーニングに共通しますが、特にスピードトレーニングについては、ラストまで確実に走り切れる本数と強度で実施していくことが重要です。すなわち、まずは余裕を持った設定ペースで後半まで走り、ラスト数本をペースアップできるような流れにできれば精神的にもゆとりが持て、スピードトレーニングも意欲的に取り組めると考えます。

第22回かすみがうらマラソン大会

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「第22回かすみがうらマラソン大会」が、茨城県土浦市で2年ぶりに開催されました。この大会も回を重ねる度に規模は大きくなり、今年の参加者は何と2万7千名をこえ、国内3番目の大会へと成長しました。

また、この大会は国際盲人マラソン大会も兼ねており、特に今年はロンドンパラリンピック日本代表推薦選考でもありました。今回、その選考対象となる部門には7名の視覚障害者ランナーが挑戦しました。

日本人トップは、アテネパラリンピック金メダリストであるT11クラス(全盲)の高橋勇市選手でした。既に大ベテランの域に入っていますが、ここ一発の集中力と狙った大会に調子を合わせるピーキングは他の選手を圧倒していました。

その高橋選手のトレーニング方法は、狙ったマラソン大会に向け、たくさんのレースに出場していきます。そして、レースでの実戦をトレーニングと位置付けながら狙ったマラソン大会に調子を合わせていく調整で数々の実績を残してきた選手です。

一方、今大会の総合優勝は、あの川内優希選手でした。記録は2時間22分38秒と平凡でしたが、40kからの2.195kは6分9秒と、驚異的なスパートでカバーし、力の違いを見せつけました。しかし、実績のある選手が、格下のレースに出場すると様々な批判を受けるケースも多々あります。また、下手な成績を残すと、更に批判を受けるケースも多いので、実績を残せば残すほど好きなレースに出場していくことは難しくなります。

ところが、川内選手はそんな周りの言葉に惑わされることなく、自分自身のマラソンに対する理論と情熱で突き進んでいます。実は、全盲の高橋選手もこの点は似ていると感じます。

特に、レースを「質の高いトレーニング」と位置付け、思い通りのランニングライフを満喫しながらレベルの高い実績を残している点は二人に共通しています。

また、二人とも何かと話題の多い選手と感じますが、自分自身の考え方の軸が絶対にブレません。このメンタル面の強さこそが、数々の大きな実績を残してきた大きな要因のひとつに違いありません。

そして、これからも二人はマラソン界の常識を覆していくような快走を見せてくれることでしょう。

期分け・41

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マラソンの走り方について、前後半のハーフに分けてどのようなペース配分が効果的かを考えています。これまで、前後半のペース配分を一定に保つイーブンペース型と、後半のハーフをペースアップする後半ビルドアップ型について考えてきました。

その結果、どちらの走法も効率的なペース配分ですが、常にその走法で安定したパフォーマンスを発揮していくことは意外と難しいとの考えに至りました。もちろん、全てがこのとおりとは言えません。しかし、イーブンペース型も後半ビルドアップ型もかなりの経験と走力が要求される走法であることに違いありません・・・。

そして今回は、、最後に残った走法である「後半ペースダウン型(スローダウン)」を考えていきます。ただし、この走法は場当たり的な「前半突っ込み型(後半失速)」とは違いますので、誤解のないようお願いします。

もちろん、どちらも後半ペースダウンする走法なので、常識的にはどちらも良い走法とは言えません。しかし、ふたつのパターンには相違があります。では、最初に何をさかいに「前半突っ込み型(後半失速)」と、「後半ペースダウン型(スローダウン)」とに分かれるかを考えていきますが、そのヒントは何キロ地点からペースダウンしたかを分析していくと判断できます。

それは、自ら経験したランナーも多くいると思いますが、ちょうど中間点をさかいに判断することができます。具体例として、中間点前からペースダウンした場合、高い確率で30k以降は歩く程度のスピードまで失速し、完走することも難しい状況に・・・。ところが、30k過ぎからペースダウンした場合、多くのランナーは何とかゴールまで粘り抜くことができます。そして、ハーフ地点から30k間でペースダウンした場合も高い確率で「前半突っ込み型」と同様になります。

このように分けると多くのランナーは、「そんなことは誰でも知っている常識」と笑います。

しかし、この中間点をさかいにペースダウンするか否かは、実業団選手(プロ)にも当てはまります。特に、最近のレースではペースメーカーがつき、男子マラソンはちょうど1kを3分のペースで刻んでいきます。そして、ほとんどの国際マラソン大会では中間点まで数十名の大集団を形成します。ところが、ほとんどの国際マラソン大会ではそこから一気に集団が崩れていきます。

その結果、中間点前後からペースダウンしたランナーの多くは一気に崩れ、完走すら危うい状況まで失速していきます。

つづく。

期分け・40

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前回からの続きで、「後半のハーフをペースアップする走り方」について考えていきます。

この走り方は前回もふれたように、最も効率的な走り方のように見えますが、マラソンに限って言えば最も再現性(安定性)の難しい走り方と感じます。その理由については下記に記載しますが、概ねハーフマラソン以下のロードレースや駅伝の走り方と大きく相違する点でもあります。

すなわち、マラソンに限っては、後半ペースアップする走法を自分自身の持ち味としてどんなマラソンでも常に発揮することは極めて難しいと感じます。※後半を諦めずに粘り抜く走り方とは違います。

では、なぜ難しいのかを考えてみます。

◆理由1).後半ペースアップするタイミングや、どの程度のペースアップならゴールまで押し切れるかを自分自身で判断することが難しい。

至極当然のことですが、マラソンは走っている時間や距離が長く、自分自身の体調や調子よりも当日の天候やコースに大きく影響を受けます。したがって、前半を抑えているつもりでも、コースによっては前半のアップダウンで狙いどおりに体力を温存できないケースや、後半に入って気温が上昇したり向かい風になるケースもあり、自分自身のイメージどおりに走ることが、実は難しいのです。

◆理由2).マラソンは、一緒にレースを走っているランナーからの影響を大きく受け易く、特に後半は自分自身のペースを貫いていくことが難しい。

例として、自分自身もペースアップしているにも関わらず、どんどん後続から追い抜かれているレース展開になった場合、メンタル的にも苦しくなり、高い確率で失速します。逆に、後半どんどん追い抜いている展開になったとしても、大きく失速しているランナーを追い抜いている状況はよくあり、実は追い抜きながら自分自身も失速しているケースは意外と多いのです。

◆理由3).後半ペースアップして好記録や好成績を達成できたとしても、なぜうまくペースアップできたかをゴール後に自分自身で解析することが難しい。

「30kから足が軽くなった」と、振り返るランナーがいます。しかし、次のマラソンでも同じように30kから調子が上がるような調整をすることは、実業団選手(プロ)を持ってしてもかなり困難な調整と言えます。また、「苦しくなっても前の選手がタイミングよく落ちてきた」と、振り返るランナーがいます。これについても常に同じようなレース展開にすることを誰も保障できません。他にも後半ペースアップするためには、前半をどの程度の余裕を持って通過するかを具体的な数値で表すことが難しく、レース中にそれを判断することは更に難しいと言えます。

以上のように、後半ペースアップする走法でマラソンを攻略していくことは意外に難しいと考えます。そして、過去においても後半ペースアップする走法を身上にして活躍したマラソンランナーは、ほとんどいなかったと記憶します・・・。

つづく。

期分け・39

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少し間があきましたが、引き続きマラソンの前半と後半のペース配分についてです。

前回は、世界記録及び日本記録の実績ラップから前後半ハーフの差異。また、私がコーチしている女性市民ランナーの実績ラップから前後半ハーフの差異を分析しました。※詳細については、前回の「期分け・38」を参照願います。

世界記録や日本記録の場合、記録を狙うためのペースメーカーがキッチリと先導するため、ほとんどイーブンペースです。このことから記録を狙うには1k毎に狙った設定ペースを刻んでいくことが最も効率的であることが読み取れます。

ところで、どんなランナーでもイーブンペースで刻むことができるのでしょうか?

実は、このイーブンペースでマラソンを攻略することは確かに効率的ですが、ある設定ペースを一定に刻むには、自分自身の走力や当日のコンディションを常に把握しておく必要があります。更に、マラソンに向けた調整段階での5kや10kのタイム、あるいはハーフマラソンのタイムから目標のマラソンタイムを狙える調子か否かをスタート前までに見極める判断力が必要不可欠になります。

このように、最も効率的なイーブンペースでマラソンを走り切るためには、それを実戦するための準備(トレーニング)と、相応の走力を身につけておく必要があります。つまり、偶発的にイーブンペースで走り切ることはできても、常に安定したイーブンペースで走り切ることは簡単なことではないのです。同時に、優れたペース感覚が身についていないと、コースやコンディションの違うマラソン大会毎にイーブンペースを再現することもできません。※但し、実力より遅いペース設定でのイーブンペースは、この考えに該当しません。

一方、前半のハーフをおさえて、後半のハーフをペースアップする走り方はどうでしょうか?

正月の箱根駅伝をはじめ各種駅伝大会では、「前半を抑えて後半ペースアップする走り」を指示しているチームが多く、実際にそのような走りの選手が好走しています。もちろん、マラソンもそのような走り方が、効果的なひとつであるに違いありません。

ところがマラソンの場合、走る距離や時間の長さが駅伝とは全く比較になりません。そのため、前半を抑えて後半ペースアップする走りで成功したとしても、それを何度も再現して記録を更新しているランナーは、とても少ないと感じます。それどころか逆に、後半ビルドアップしながら追い上げての優勝や、自己記録を更新したランナーの多くは、その後のマラソンで伸び悩んでいるケースを意外と多く目にします。これは、実業団選手にも多く見受けるケースです。

ではなぜ、後半ビルドアップするレース展開の再現性は難しいのでしょうか?

この点については、次回考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・7

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3月11日、ロンドンパラリンピックに向けた最も重要な大会のひとつである「九州チャレンジ陸上競技選手権大会」が、熊本県で開催されました。

この大会は、ロンドンパラリンピックの参加標準記録を目指せる国内最後の大会でした。ところが、あいにくの雨となり、短距離や跳躍系の種目はもちろん、車椅子選手にとっても厳しいコンディションとなりました。

これまで何度かこのブログでも記載しましたが、ロンドンパラリンピックに出場するための参加標準記録を公式に残すには、次の条件を満たす必要があります。◆1).選手が国際パラリンピック委員会(IPC)に選手登録をしている。◆2).選手が自分の障害を判定する国際クラス分けを受けており、「R」か「C」の認定を受けている。◆3).出場する大会がIPC公認の大会である。

最低でも上記3つの条件を満たしていないと、パラリンピックの参加標準記録を突破したとしても記録は公認されません。したがって、一般の日本陸連公認大会や各種選手権大会で参加標準記録を突破した場合、日本陸連としては公認されるが、パラリンピックとしては公認されない状況が発生します。

特に、視覚障害クラスや手足障害クラスの選手は、健常者の大会に出場している選手も多数います。具体的な例として、世界中から注目を集めている南アフリカのピストリウス選手(T43クラス/両下腿切断)は、健常者の世界選手権に出場するなど、その活躍は群を抜いています。※今現在、オリンピックを目指している一般の日本人選手の中でも彼より速い選手はひとりもいない。

ところが、一般の大会で大活躍したとしても、上記にある3番目の条件を満たしていない大会ならパラリンピックの公式記録としては公認されないのです。つまり、ピストリウス選手でもIPC公認大会で記録を残していなければ、オリンピックには出場できてもパラリンピックには出場できないことになります。

このように、パラリンピックに出場するための公認記録を残せる大会は世界的に見ても少なく、国内でも5つ程度です。そして、今大会はロンドンパラリンピックの参加標準記録を目指せる国内最後の大会でした。※障害者の国体は、IPC公認ではなく、パラリンピックとは全く関係のないローカル大会となる。

しかし、残念ながら今大会からロンドンパラリンピックにつながるような記録は・・・。

したがって、日本代表選手の決定は6月以降ですが、今大会でロンドンパラリンピックへの道が事実上閉ざされた選手も多数います。とても残念なことですが、次の大会に気持ちと身体をシフトさせてほしいと願っています。

さて、そのパラリンピックも2004年のアテネ大会あたりまでは、不慮の事故や疾患等で障害を負った人が突然パラリンピックに出場してくるケースもありました。しかし、2008年の北京大会を境に上記した3つの条件がより厳格になりました。その結果、パラリンピックに出場するための選手に課された記録以外のハードルが高くなり、一般のオリンピックのように記録だけに集中した対応だけでは、日本代表に選考できなくなりました。

今後の選手強化や普及として、単に競技力の向上だけに特化せず、パラリンピックに出場するための道筋をどのように示していくかも大きな課題のひとつになりそうです。

つづく。

2012名古屋ウィメンズマラソン

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女性ランナーだけに限定した「2012名古屋ウィメンズマラソン」が、盛大に開催されました。また、この大会は、昨年までの名古屋国際女子マラソンを引き継ぐ大会です。そのため、今回はロンドンオリンピックの国内最後の選考レースでもありました。

その結果は既にご存知のとおり、尾崎選手が日本人トップでゴールし、ロンドンオリンピックの代表切符を見事につかみました。また、ロンドンオリンピックに向けた代表選考レースはかつてない注目を集め、何かと話題の多い選考だったと思います。

そして、その中心だったのが、川内優希選手であることは誰もが認めるところです。しかし、残念ながら川内選手は代表入りを果たせませんでしたが、その果敢な走りと自己の結果に対する厳しいコメントは、これまでの常識だった壁をいくつも突き崩したと感じます。

そのひとつは、代表選考レースに複数回挑戦したことです。これにより、実業団選手や代表有力候補とされる選手までもが、再挑戦する姿が数多くありました。その結果、今回の名古屋で快走した尾崎選手は再挑戦での代表入りとなりました。一方で、堀端選手や赤羽選手は裏目に出てしまった感も残りました。いずれにしろ、これまでの代表選考に比べ、透明感は格段に増したように思います。

そして、川内選手が残した最も大きな功績は、マラソンで日本代表になれる可能性は誰にでも平等にあることを示した点ではないでしょうか。具体的には、どんな生活スタイルやトレーニング環境であろうと、記録と結果が伴えば、必ず道はひらけることを証明したことです。

実は、どのスポーツもチャンスは平等にあると思いがちですが、よく分析していくと多くのスポーツが必ずしもそうではありません。しかし、マラソンは過去の実績や経験に関係なく誰でも選考レースに出場できるチャンスがあります。そして、たとえ無名のランナーであってたとしても記録と結果を残せば日本代表入りは実現します。これは、他のスポーツではほとんどあり得ないことです。そして、この極めてシンプルな仕組みを川内選手があらためて示したのです。

さて、今回の名古屋では1万人以上の女性市民ランナーが参加しました。これだけでも画期的なことだと思いますが、サブスリーを達成したランナーも90名をこえていました。もちろん、全体から見た割合は少ないですが、女性市民ランナーのレベルは確実にアップしています。

また、私の個人的な意見になりますが、女性ランナーは子供を出産した後、30代から力を発揮しているケースがとても多いと感じます。また、学生時代に陸上競技経験の有無がマラソンのパフォーマンスに直結しない点も女性ランナーの大きな特徴でもあります。残念ながらこの点は、男性ランナーにはあまり当てはまりません。

このことから川内優希選手のようなランナーは、実は女性市民ランナーから現れてくる可能性の方が高いのではないでしょうか。あくまでも個人的な意見ですが、次回のオリンピックあたりから、子育てをしている専業主婦から日本代表に名乗りをあげる女性市民ランナーが出現してくるかもしれません。

大いに期待したいと思います・・・。

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